理事長基本方針

たくましく、凛とした個と地域の確立

強い意志を持った JAYCEE による地域力と可能性の発揮

理事長 橋 直揮

目 次

明日をひらくために

 戦後の廃墟の中で食べることさえ事欠いていた暮らしから現在の日本を見れば、私達の暮らしは豊かさの中にどっぷりと浸かっていると言えます。奇跡とも言える戦後の復興、富の構築そのものは、私達日本人の誇りと言える出来事でしょう。しかし、その豊かさを掴むにつれて、様々な大切なものを失ったことに気づいているでしょうか。豊かなはずなのに心は満たされず、衣食が足りているはずなのに心が乏しく、自由なはずなのにどこか閉塞感があり、その気にさえなれば、どんなものでも手に入り、何でも出来るのに、無気力で悲観的になり、中には犯罪や不祥事に手を染めてしまう人さえいるのが実情です。単に時代の流れと言ってしまえばそれまでですが、その流れの中で一つひとつ、生きていく 上で大事な物を見失ってきたのです。

「人間の幸福は、自由の中に存在するのではなく、義務の甘受の中に存在するのだ」

サン・テグジュペリのこのような言葉があるように、義務を遠ざけるのではなく、自ら積極的に引き受けることで、逆に限りない自由が与えられて幸せになるということです。
人間は生まれながらにして義務を背負い全うしながら成長します。義務と権利は表裏一体の価値概念ですが、今の世の中では当たり前のことを当たり前に受け入れず、権利のみを主張する風潮があると感じます。結果、混迷は深まり、世の中はますます混沌とし、社会の混乱は広がっていく。そんな危機感を感じているのは私だけではないはずです。

現代の日本で、人間の権利や義務、倫理や道徳などと言うと、時代遅れの錆びついた考えだという印象を抱く人も多いかもしれません。しかし、人間としての正しい生き方、あるべき姿を追求することは、個の問題ではなく、これからの社会生活や経済活動、ひいては日本の将来を導く大切な道ではないかと考えます。それを見失った結果が、現在の様々な事件などを引き起こす要因になっているのではないでしょうか。明治維新や戦後の復興もそうであったように、日本が歴史的危機や転換期に差し掛かった時、必ず民衆から立ち上がって来ました。日本人は心で生きてきた民族であり、現代もその心が変われば国や地域の問題が解決し、失った「精神性」や「倫理道徳観」が再生する日が来ると信じます。

子供達の環境においても、人の為、公の為、義の精神といった概念が戦後教育によって変わって来たように思えます。5 年後、10 年後などという、すぐ先の未来のことだけを考えるよりも、50 年後、100 年後の未来のために、今一度、日本人が育んだ知恵の結晶、即ち倫理や道徳などといった、日本人が古来より育んできた価値観を取り戻す必要があるのではないでしょうか。古くから受け継がれてきた精神があったからこそ幾多の困難も乗り越え、日本人の自信と誇りになったのです。まずは我々も含め未来のために今一度、多くを学び直し、失った精神性や倫理道徳観を取り戻す必要があるのです。人間が生きていく上において基本的な概念として求められるのが学ぶことであり、学ぶことの中で最も重要な要素とは、単に知識を獲得する行為だけではなく、そのためのトレーニングを通じて、分からないことや大量の問題に立ち向かっていく心の強さを培っていくこと、そしてその心の強さを自信と誇りに変えていくことであり、重要なことなのです。戦後の何もない時代を生き、立ち直り、ここまで国造りを行ってこられたのも、当時の国民が学ぶ心を失わずに高い精神性と誇りを兼ね備えていたからではないでしょうか。自力で生きていくという心の強さを持っていたからではないでしょうか。

「英知と勇気と情熱」を持った、我々JC が今、この国に生まれた「自信と誇り」を取り戻し、明るい未来を創り出すのです。

地域経済を立て直すリーダーの役割とは

 世界的な不況が今、 各国の経済を激しく脅かしています。
日本でも厳しい現実に直面し、特に地方経済や中小企業において顕在化しております。商店街ではシャッター通りが増え、町工場などではリストラなどの経営策によって雇用情勢が不安定な状態に陥り、経営者も先の見えない夜間飛行をしているような状況を続けています。これまでの経済は高い収益を上げることや、コストを下げて競争力を高めることなどが価値とされてきました。しかし現在の不況は、21 世紀の経営スタイルに体質を変える大きな変化の谷間に起こった不況ではないかと考えます。21 世紀に必要とされる経営スタイルとは、自然との共生や人間の心を大事にすること、そして徳育などの分野に重点をおいた経営方針が必要なのであり、我々も世界的な経済社会が21世紀型に変わりつつあることの重要性を自覚しなければならないのです。新しい時代の下では、物事を判断する基準となる価値観、座標軸の転換が起こり、人の生き方、考え方が大きく変わります。誰かが何とかしてくれるだろうといった、何の確信も無いものに頼りきった考え方を変えるために、市民的教養を醸成させること、それに関わる教育が重要になると考えます。この過渡期だからこそ、内向きの狭い視野で舵取りをしていては道を誤ります。現実を見て、周囲を見渡しながら、新しい経済社会を踏み固めていかなければなりません。時代を先読みし、次の時代に引き渡すのが我々JC の役割です。社会全体のことを考え、雇用環境や経済活動において若者の心の中に自然と希望や意欲が生まれるような構造を創ることが出来れば、地域の将来に心配はないのではないかと思います。現在は社会が若者を見捨て、また若者も社会を見捨てるという不幸な構造になっていますが、この悪循環を改善することはとても重要なことなのです。地域や企業などのリーダーを育てるという観点から考えた時も、新しい時代の価値観に沿って地域社会を牽引する資質を磨くことから始めなければなりません。これまでの社会的な要職、企業のリーダーの選び方や育成など、リーダー個人の資質や人格というよりも、才覚や能力を基準に選んできたように思えます。昨今のエリート官僚などが起こす不祥事などを例に見るように、試験において成績だけが良い人材が要職やエリートコースに就くことなどは、その代表的な例ではないでしょうか。内的な規範や倫理基準に乏しい人物がトップに据えられてきたことによって、近年の多発した官僚を始めとする組織の不祥事など、社会や企業の道徳的退廃を進めているように感じられます。弁が立ち、知に富んだ実利実用型の人物も大変重要ではありますが、それ以上に人間的な重みを持った人物の育成が必要ではないかと考えます。
 2010年は新潟市長が改選となります。選挙において、地元への利益誘導や企業などの繋がりで成り立つ政治家や、候補者の政策を考えずに政党の後押しだけを考えた選挙の風潮から脱却し、遠回りになるかもしれないけれど「大きなものの考え方」のできる政治家を選ぶ必要があるのです。温かさや優しさを持ち、困っている人や弱い人を大事に考える人間性を持ったリーダーを現代社会は求めています。本当に「明るい豊かな社会を創造する」という気概があるのかを見極める力を具え持つこと、民間人としての我々は経済的、社会的な責任を担い、次の時代を創り出すリーダーになる必要があるのです。

魂の力より生まれる国際社会の構築

 1970年から1980年にかけ、多くの日本人が不自然な形で行方不明となりました。
我々が住む新潟はその事件の多くを抱えており、北朝鮮が起こした国家的犯罪行為に対しては、現在も解決への糸口に今一歩踏み出せずに至っています。拉致問題とは「家族愛」の戦いであるとも考えます。拉致被害者の家族愛、親としての愛情が事件を風化させずに全国的な運動にまで発展させました。そして我々JC の世代も、同じ子供を持つ責任世代として解決への行動を起こさなければならないと感じます。人間の最も強い苦痛の一つとして愛する家族との離別があります。被害者もその家族も、やり場のない怒りに30年余りの間、苦しんでいるのです。離れ離れになった家族は政府の無関心と消極的な政策によって会えないかもしれないという絶望感と共に毎日を暮らし、 それでも被害者とその家族は 「家族の絆」だけは失わずにいるのです。我々は被害者家族が抱き合える日に向かって運動を展開させなければならないと強く感じます。拉致問題だけではなく日本海を挟んだ領域においても大きな問題を抱えています。我々の住む日本の領海は国民の営みと安全を保証する重要な砦です。しかし、その領海を含む範囲の開発を他国が一方的に進めているにも関わらず、そのまま領土・領海という意識が国民の頭から忘れられてしまっている事実があります。考えてみてください。私達が生まれた新潟がそのような状況であったら。我々は世界における日本の立場や領土・領海を軸とした様々な国益を子供達のために明確にする責任があるのです。
 昨今の緊迫したアジア情勢の中でも、新潟JC は姉妹締結した海外LOMと友好的な交流を行って参りました。それは長年に亘り築き上げてきた信頼や友情、相互理解によって、互いの国や地域性を知った上で、それぞれが国際交流の価値を認めてきたからだと思います。我々は国際交流を通じ民間の代表として、その友情を更に意味のあるものに変え、網領にもあるように 「国際的な責任」 を自覚し、 LOMの姉妹締結のための交流だけではなく、互いの個と公に対する民間外交の必要性や、精神的な発展を視野に入れた交流を続けて行く必要があります。25年前より行われてきた5年に1度のスポーツ交流も今年6回目を迎えます。言葉は通じなくても、スポーツによって国や組織だけではなく、個としても互いの関係は構築されます。共に競い合い、その中から信頼や友情を育み、子供達にスポーツの意義や国際交流の楽しさ、互いの国の価値観を知ることによって、自分の国や地域を改めて見つめ直すことのできる重要な機会であると思います。 5年に1度という限られた交流から改めて民間外交の意義を考え、国同士の経済摩擦や互いの国益争いから生まれる外交戦略などではなく、民間同士がスポーツという分野で同じ価値観を共有し、互いを尊重し認め合うことができれば、平和とは魂の力より生まれる美徳であるということが民間外交の力で証明されるのです。

次世代を背負う JAYCEE であるために

 我々JAYCEE は、地域の様々な分野の発展という責任を担っております。そして常に行政や地域のNPO、 経済団体との連携により成長を続けている団体でもあります。 つまり我々の行動や活動は常に注目され、組織としての資質やメンバーひとり一人のモチベーションをも社会に見せていく必要があるのです。JC に所属する社会人として、青年経済人として我々は目標とされる人材でなければなりません。我々の行動を見て、この組織でトレーニングを積みたい、地域の力になりたい、JC の活動を通して子供達に豊かな将来を残したいと目標にされる組織と個人であるために、メンバー全員がしっかりとした理念と志を持ち、新たに入会するメンバーの模範とならなければなりません。何かに敬意を感じ、憧れ、自分自身をそこに重ね合わせていくという日本人の心を持ち合わせた人材にならなくてはなりません。そしてそれを受け継ぐ義務もあります。JC だからこそ経験できる研修期間として仮入会の期間がありますが、その大切な期間があるからこそ社会貢献や公に対する考え方、リーダーシップが生まれます。新潟 JC の独特な手法や考え方など、その多くは 55 年間培われたものであり、新潟の経済界を担っている先輩方の教えでもあります。今一度、次世代に引き継ぐための人材づくりを考え、新潟JC が一枚岩となり、更に成長し、市民から付託を受け続けるように改めて考え、行動する必要があると感じます。
 新たなるJAYCEE の育成と同様、会員相互の関係構築や意思の疎通も重要な役割を果たします。物事の考え方や情報の交換も含め、新潟JC がひとつになるための交流として長年に亘り続いている新年会や納涼会、各種大会のLOM ナイトなどは、会員相互の関係が深まり、行ってきた事業などに関して時には尊敬し合い、時には指摘もし合うことから共に学び向上していきます。そして立場や環境の違う互いを客観的に判断することのできる重要な役割も果たしております。一個人に対しても公益性が求められつつある現代社会の中での組織であるからこそ、互いの利益だけではなく、組織や地域社会のための利益を求め実現していくために、膝を交えて深く関係を構築する場が必要なのです。

より公益化が進む社会において

 国は民間非営利団体に対して、健全な社会経済システムを促進する上で公益法人制度改革を推進しております。数年の間で移行を踏まえた動きが活発化している中で、日本JCも数年前から移行へ向け様々な活動や指導を行ってまいりました。 そして我々新潟JC も判断をする時期が近づいてきております。当然、公益社団法人取得によるメリットやデメリットはありますが、現在の社会システムや時代の転換期であることを考えた上で公益社団法人を選択することが社会的に認められた組織に進化し、より公益性を保つことができると感じております。公益社団法人に変わることによりLOM としてのシステムや、これから築き上げる新潟JC としての歴史、組織の在り方、考え方が今までと変わる部分があるわけですが、認定、取得によって長年に亘り新潟JCに対して築き上げてきた社会的価値や組織の人材が変わる訳ではありません。しかし仮に公益移行後、現在表面化されていない継続していく為の様々なリスクや、公益社団法人としての会員の意識を長期的に考えた上で、既に取得した県外LOMや申請を進めているLOMの動きを見極め、公益、一般どちらに選択を進めても道を誤らないように申請準備は怠ることがないよう努めていくことが今は現実的であると考えます。どちらを選択しようとも我々の基本理念は「明るい豊かな社会」を創ることであり、その志の下に集まった JAYCEE による運動が変わることはないのです。
そしてメンバーひとり一人が公益な財産であり、その集合体がJCなのだから、組織の精度が向上していくことを進めるのは当たり前のことではないかと感じております。
 LOM 運営に関わる事務的な業務も、この 10 年間で大きく変わってきております。総務の業務も、公益化へ向けたシステムの変化の中で会議の効率化や円滑な組織運営が求められてきます。 新潟JC シニアクラブをはじめとする様々な窓口を担う重要な役割だからこそ、これからの組織運営のあり方を内外に見せていく必要があるのです。各事業をバックアップする要とも言える業務を、これからも更に進化させていくことが LOM の発展に繋がり、次世代へ向けて新潟JC が安心して運動を行えることになるのです。

情報に対する知識の重要性と発信力

 情報が溢れている社会において、主に受信側である我々は、一方的に発信される情報に対して正確な判断知識を持ち、読み解く能力が必要となります。受信する情報が正しい情報であるか、偏った情報でないかを判断し情報を使いこなす力を養わなければなりません。大人も子供も現在のように溢れる情報の波の中から、どのようにすれば賢い選択の仕方を学ぶことができるのかを考え、ただ流される情報を鵜呑みにせず、 受ける側の責任として、メディアリテラシーを高める必要があるのです。そのためには我々がしっかりとした意識を持った利用者、選択者となり、子供達に対しても指導者でなければなりません。技術の進歩と同時に情報を臨機応変に生活に活かしていく必要があるのです。受信者としての立場だけではなく新潟JC として発信者の立場も重要となります。現在まで構築された発信するための手法も、時代と同じくメディアの在り方も変わっていく中で更に進化をしていく必要があります。様々な人々が見るであろう我々の情報を、受信側の立場から信頼性・中立性が保たれた情報であるのか、受信者として有益なものであるかを踏まえた上で、JC 運動の発信と理解、参画を進めることが重要なのです。
各種メディアとの連携や関係構築からJC の考える社会を実現するためのツールとしての役割と、継続してきた事業や、これから行う社会変革に向けた運動を更に深く知ってもらうために、情報の分野から、したたかな行動を起こすのです。選択肢が多い時代だからこそ、もっと前に出て知ってもらうことから始めなければならないのではないでしょうか。

JAYCEE の強い意志と行動力が未来を創る

我々は社会に対して強い意志を持ち、 「こう生きます」という気概を見せなければなりません。時代の転換期と言われる今だからこそ、自分の意志を明確にし、気概を見せることによって、この時代を生き抜くことができるのではないでしょうか。何かから立ち直るための力や精神力は、 国や地域が与えてくれるものではなく、 最後は己の力しかないのです。この殺伐とした時代を誰かや何かに頼り、社会や情報の波に流され、個人の意思も無く生きていくだけの人生であれば、将来に対し夢や希望など見ることはできません。人間としての生き方ではなく、すべてがシステム化された動物として生きることしか出来ない人になるでしょう。生きるということは行動することであり、国や地域、民の幸福とは個々の行動による権利であるのです。しかし世界に目を向けた時、それら個の権利を破壊するものは、武力を用いた戦争だけではなく、多くの発展途上国がそうであるように経済的な問題であったり、偏った思想や主義を前提とした教育方針の違いであったり、信じがたい混乱や破壊であったり、それらによって国民の生活と運命までもが無になってしまうのです。このような現代社会に蔓延する問題に対して我々JAYCEE は強い意志と行動力を持つことによって、他国とは違う物事の考え方や、高い精神性を持った日本人で生まれてきたのなら解決ができるはずなのです。教育程度も高く賢い国民であるのなら、矛盾に満ちている現代の関わりの中では、善も悪も理解し尽した大人にならなければいけないのです。そして先頭に立ち行動を起こすのが我々JAYCEE の役割であると自覚しなければなりません。我々の運動のすべてがすぐに効果や変革を起こすものではありません。しかし何十年掛かるか分からない様々な問題の解決のために、今を生きる責任世代として行動することによって、我々の子供達が大人になった時、再び陽の出る社会になると信じております。我々は考え行動するのみです。日本人としての人類に対する普遍的な価値観が、様々な問題を抱える国や地域を再建するだけではなく、世界を動かすことのできる礎であると私は信じております。

世紀の科学者、アインシュタインが大正末に来日した際、こんな言葉を残しています。

「世界の未来は進むだけ進み、その間幾度か争いは繰り返されて、最後に戦いに疲れる時が来る。その時、人類はまことの平和を求めて、世界的な盟主を上げねばならない。この世界の盟主になるのは、武力や金力ではなく、あらゆる国の歴史を抜き超えた最も古く尊い家柄でなくてはならない。世界の文化はアジアに始まりアジアに帰る、それはアジアの高峰である日本に立ち戻らねばならない。我々は神に感謝する、我々に日本という尊い国を造っておいてくれたことを」

この閉塞感漂う世の中を切り拓くのは、JAYCEE の持っている強い意志と行動力です。

自分の力を信じ、仲間を信じ、この時代を生きる世代として責任を果たすのが、我々の使命であると確信します。

事業計画

(1)
徳育・倫理道徳論に重点を置いた日本人としての生き方と考え方を追求する運動。
(2)
教育の分野において将来に対して自信と誇りを持ち、義の精神や公を重んじる精神を持った強い子供達を育成することを目的とした運動。
(3)
地域経済を活性化させ、同時に社会・企業のリーダーシップを追及する運動。
(4)
対岸に関わる問題を深く考え、解決への一助となる運動。
(5)
メディアリテラシーを高める運動。